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2021年5月27日木曜日

新渡戸稲造の至言から(5月27日)

 

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「本国商品の市場として植民地を獲得することは理由ある…が、その利益は一時的のものであって、植民地の発達につれてその意義を失ってくる。なんとなれば植民地自身において工業が発達すれば、自己の消費する物は植民地自ら製造するようになるからである。」(新渡戸稲造『植民政策講義及論文集』)

 

100年前に新渡戸が生きた植民地時代と現代では、随分、国際社会の様相が変わって来た。飛躍的に交通手段が発達し、それに伴い貿易が増大し、国家間の経済的相互依存関係が深まった。「植民地」という言葉は過去のものとなった。しかし、100年前でも現在でも変わらないのは、国際社会における国家間の関係である。「大国」が「小国」を支配する弱肉強食の世界である。ただ、各国とも自国利益を守るため、それぞれ工夫をし、新渡戸も指摘している通り、国際関係は常に動いていて、「途上国」が「新興国」、さらに「先進国」となって行く。現在の中国がその典型である。


・「市場として植民地を獲得する」という新渡戸の言葉。今日でも、企業は市場を求めて、人口の多い国や経済成長の著しい国に進出する。製品の輸出先もしかりである。しかし、もはや「植民地」ではないので、その「市場」は自由にはならない。進出先の国家は、企業に対して思いがけない規制をしたり、輸出先の国家が外交手段として急に輸入を止めたりすることが出来る。様々な事が瞬時に起こり得る今日の国際社会は、より複雑化しているように見える。

 

・藤井茂・長本裕子著『すべての日本人へ 新渡戸稲造の至言から』158頁には、後藤新平や新渡戸の台湾での植民地政策が良かったのだろう、と書かれている。確かにそうであろう。ただ、今日の台湾の人々の親日的態度は、それのみでは計れないと思う。台湾の人々自身が、当時の政策の功罪を客観的に理解し、良き部分に感謝する教育を受けながら、自らもそれを学んできたからだと思う。日本人の先人(偉人)とともに、台湾の人々にも敬意と感謝を表したい。

 

・「都市による搾取がなくなったとき、初めて村は生き返る。都市の象徴は言うまでもなく大規模な工業化であり、これらのものは間違いなく、市場での競争原理を生み出す。この原理が村に住む人々を搾取してきたのだ。マハトマ・ガンジー

 

・「現代人は自分自身からも仲間からも自然からも疎外されている。現代人は商品化し、自分の生命力をまるで投資のように感じている。投資である以上、現在の市場条件のもとで得られる最大限の利益をもたらさなければならないということになる。人間関係は本質的にロボット同士の関係になっている」(エーリッヒ・フロム

 

・「戦争は市場を創設するという意味で、現在の経済構造に積極的に組み込まれており、私が現在の構造を批判する理由の一つもそこにあります。」(ミヒャエル・エンデ

 

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